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ノンフィクション作家
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おもな掲載記事 ARTCILE

女性自身 (光文社) 2007年1月16・23合併号
注)法整備の状況などについては掲載当時のものです




向井亜紀「代理母」が告白 私が彼らの子を産んだ理由

高田延彦・向井亜紀夫妻が3度目のトライとなる代理出産によって、双子の男児を授かったのは20031128日。あれから3年経った今、米国人の代理母・シンディさんは何を思うのか? 彼女の肉声を聞くために、昨年末(2006年末)、ネバダ州の自宅を訪れた。




 

リノから車で約1時間、薄茶色の小高い丘が連なる平原を走り抜け、シンディ・ヴァンリードさん(35)が93年に再婚した夫・ジェイムスさん(42)、16歳と14歳の娘、8歳の息子と暮らす小さな田舎町に到着した。
「ハロー」

迎えてくれたシンディは細身で、ピンクの長袖Tシャツにジーンズ姿。クリスマス直前の自宅の中は、赤と緑の飾りつけが至る所に施されている。暖炉のあるダイニングルームのテーブルで向かい合うと、シンディは少し緊張した面持ちで語り始めた。

代理出産はすばらしい経験だったわ。双子を出産できたことを心から幸せに思っているの。双子の成長の報告を受けたり、アキとノブが親として彼らの世話をしている姿を見たりするのは、とてもエキサイティングなこと。それから、健康な子どもを産めたこと、彼らが普通の日本人として育っていることを誇りに思っています。私自身は、彼らの「おば」のように感じているの。

私にとって、アキはファミリー、いとこみたい。それくらい近い存在よ。代理出産をするまで、日本人のことは誰も知らなかったけど、アキたたち、スタッフの人たち、みんなとてもナイスだった。近いうちに日本語を学びたいと思っているの。

3、4カ月に一度は、メールや手紙で連絡を取り合っています。この夏('06年7月)、アキたちと1週間ハワイに行っていたの。双子の子どもたちはゲイジ(シンディの息子)をすっかり好きになって、一緒に手をつないで歩いていたわ。彼らはすぐに、「ゲイジはどこ?」って探すのよ。本当に楽しい時間を過ごせたわ。

アキは日本で代理出産をオープンにしているから大変なこともあるだろうけど、私は100%、彼女をサポートしたいと思っているの。いつか来日して、直接、日本の人たちに伝えたいと思っているぐらいよ。「代理出産をしてよかった。彼らの子どもを産めて本当によかった!」って、声を大にして言いたいの。アキたちのこと、双子のボーイズのことを心から支えたい。

でも、双子に対する感情にゲイジに感じるような「親子のつながり」はないの。妊娠中も、アキたちの子どもとして愛情を注いでいたわ。PRIDE(高田延彦が統括本部長を務める日本の格闘技団体)の試合をテレビで見ていて、ノブがリングに上がったときは、「ほら、あなたたちのダディよ!」ってお腹の子に語りかけていたのよ。私の息子でさえ、学校で「ぼくのお母さんは妊娠中なんだ。アキの赤ちゃんなんだよ」って友達に話してたのよ。彼は当時5歳だったけど、お腹の子がアキの子どもであり、私たちが引き取れないことをよく理解していたわ。

――そもそもシンディが代理母になろうと思ったきっかけは何だったのだろうか? 昨年10月の一部週刊誌(1)の報道では、彼女とジェイムスが過去に自己破産をしたいたことと関連づけて、金銭目的という見方もされていたが……。
シンディはこの報道をまったく知らず、驚きの色をあらわにした。

自己破産はずいぶん前のことで、私が代理出産をしたこととは何の関係もないわ。前の夫と別れたとき、彼がたくさんのクレジットカードの支払いを私に残していったの、私には払う気がなかったんだけど、再婚した後、それらはジェイムスの借金になってしまった。だから、破産の申請をしたわけだけど――でも、それとこれがどう関係あるの? 1万8千ドルのために、金銭目的だなんて馬鹿げているわ。家族用の車すら買えない金額よ。

以前、ドキュメンタリーの番組で、子どもを持つことのできない不妊夫婦が出演していたの。その夫婦は養子をもらおうとしていたけど、うまくいかなかった。そこへ、若い妊婦がやってきて、彼らにこう告げたの。「この子を産んだ後、次はあなたたちの子どもを産むわ」って――とにかく、泣ける番組だったんだけど、そのとき、代理出産のことが頭に入ったの。私は何の問題もなく、まるで呼吸するかのように出産できた。でも、それができない人たちについて考え始めたの。それで、ジェイムスにこう伝えたの、「こういう方法で人を助けることができるのは、いいことだわ」と。

双子を産むときに帝王切開を希望した理由は、自分の子どもと区別するためではないわ。テレビ撮影していたからよ。産道を通す自然分娩はとてもパーソナルなことだから……。下半身は映さなくても、汗まみれになって、うめき声を上げている自分の姿を映されることに抵抗があったのよ。

だけど、帝王切開は思っていたより痛かったし、回復するまで自然分娩のときより10倍くらい時間がかかったの。今思えば、アキのときも自然分娩にすればよかった。


(1) 週刊朝日 2006年11月3日号
「『美談』ではすまない代理出産ビジネスの実態
 向井亜紀の代理母が語った『報酬』と『自己破産』」(大野和基)

* 年齢は2006年当時
写真掲載はシンディ本人の許可を取っている。


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