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おもな掲載記事 ARTCILE

女性自身 (光文社) 2007年1月16・23合併号
注)法整備の状況などについては掲載当時のものです


向井亜紀「代理母」が告白 私が彼らの子を産んだ理由

高田延彦・向井亜紀夫妻が3度目のトライとなる代理出産によって、双子の男児を授かったのは20031128日。あれから3年経った今、米国人の代理母・シンディさんは何を思うのか? 彼女の肉声を聞くために、昨年末(2006年末)、ネバダ州の自宅を訪れた。




 

最高裁の判断が「イエス」であることを望むわ

次に代理出産をするときには、できるだけ自然分娩にしたいの。実は3月に次の依頼主の日本人夫婦と会って、また代理出産をする予定なの。

アキとノブは自分の子どもを持つために、大変は困難を乗り越えてきたのよ。超音波検査、双子とわかったとき、出産のとき――、彼らの幸せな顔を見るのは、私の喜びでもあったわ。子どものいない夫婦を助けることができたのは、心が内側から豊かになるような体験だったの。だからこそ、もう一度やりたい。あと、1、2組の夫婦を助けたら、その後は年齢的に代理母を卒業することになると思うけど。

――不受理となっていた高田・向井夫妻が品川区に提出した出生届は、昨年9月、東京高裁から「受理」という命令が下された。しかし、法務省の指示により区が抗告を申し立てたため、最高裁での判断にゆだねられている。(2)これら一連の動きを説明したうえで、シンディの見解を尋ねてみた。

最高裁の判断が、「イエス」であることを望んでいるわ。法務省は代理出産の出生届を受け入れるべきよ。間違ったことは何もないわ。

私は何度も、代理出産を批判する人たちと議論したことがあるわ。ある男性は私に向かって、「僕は神を信じている。神が子どものいない人生を与えるならば、その人生を受け入れるべきだ」と言ったわ。「神がこの世を創造したならば、神によって、私は人のために産むことができるようになったのよ。もし、神が子どものいない人生を選べというならば、私は代理出産をすることさえできないはずよ」って、私は彼に答えたの。

代理出産は依頼主夫婦の精子、卵子を用いるから、DNA、血――すべてにおいて「彼らの子ども」になる。(双子の写真を指さしながら)見て、彼らが「私の子ども」だなんて言えないでしょう? 彼らにアメリカ人の血は一滴も入っていない。

日本は世界でも指導的立場にいるのに、なぜ生殖医療の分野においても前に進もうとしないの? 目を開けて、もっと現実を見てほしい。誰だって、近所の人、親戚、友達のなかで、子どものできない人を何人かは知っているはず。彼らがどのように感じているか、自分のこととして考えてみて。

もし、自分が不妊だったらどうするの? 自分のパートナーが不妊だったら? それでも、どうしても「自分の子ども」が欲しかったら? そのとき、代理母が手を差し伸べたら、どういう気持ちになるのかしら――。


(2) 2007年3月23日、最高裁は東京高裁決定を破棄、出生届受理を認めない決定を下した。

* 年齢は2006年当時
写真掲載はシンディ本人の許可を取っている。





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