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ノンフィクション作家
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ウエブサイト公開:「障がいを持つ女性の性的被害」

   
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    この文章は、週刊誌『AERA』の2014年5月26日号に載った「3分の1超に性的被害」の元原稿といおうか、編集部へ1回目に提出した完成原稿である。通常ならば、事実確認、誤字脱字などの校正を経たあと、おそくとも1,2カ月内には掲載される。字数や内容などはあらかじめ打ち合わせながら書いているので、それほどの変更は発生しない。
だが、「少なくとも2ページ」と聞いていたのが、編集部の判断で1ページでの掲載となってしまい、字数を半分にまでカットせざるをえなくなった。さらに掲載のタイミングも、完成原稿を送ってから半年後となった。(私としては「もういい」と原稿を引きあげるよりも、『AERA』に掲載されることを優先したのである。どうしてもこの問題を少しでも多くの人に知ってもらいたかった。)そして、残念ながら、編集部とのやりとりの中でカットされたのは、私が取材を通してもっとも激しく心を揺さぶられた点、重要だと思う当事者の声ばかりだった。


あるとき、1回目(オリジナルの原稿)、2回目の原稿(アエラ側とのやりとり後)を、なにも知らない旧知の編集者に読んでもらったところ、
「いやーやっぱり、校正をとおした後のほうが全然、よくなっていますね!パワフルに伝わってきます」
と1回目の原稿を指して、言うではないか。
「違います! そっちが最初に書いた原稿です」
と慌てて訂正した。
そうなのだ。途中で引き返すことは難しく、結果的に内容まで"薄味"のルポになってしまったのだ。

本文に登場する性的被害者である森崎里美さんにも、ふたつの原稿を比べて読んでもらった。すると、
「平井さんが最初にお書きになった原稿の方が、読む側に女性障害者の複合差別ほか、日本が持つ男尊女卑思想が招く闇が伝わると思います」
というお返事をいただけた。
そうした経緯から、別作品としてウエブに公開することにした次第である。
 
森崎さんとは2013年7月に、兵庫県のたつの市内のご自宅でお会いした。
非常に感銘を受けた。正直にいえば、話しはじめた当初は、話し方や身ぶり手ぶりが健常者とは異なるため、ほんのちょっとの違和感があった。ところが、すぐさま、その感覚は消え去り、気がつけば、夕方までずっと話しこんでいた。こちらも思わず、涙してしまう場面もあったのだが、……楽しい貴重な出会いだった。森崎さんは強かった。強くなろうと生きてきた人だった。闘いながら―ー
置かれた状況はまったく異なれど、当時抱えていた自分自身の苦しさ、辛さと重なり、話がはずんだ。その頃、すでに私は親族の年配男性(家父長制しか頭にない)と、泥沼化した相続裁判に足を踏み入れていた。そのため、相手側のみならず、男性弁護士による無理解な発言、法廷闘争に至るまでの孤立無援の苦しみ、さまざまな葛藤など、細部にいたるまで森崎さんの言っていることがわかったし、リアリティをもって想像できた。

***
森崎さんとはそれからFBでつながっているのだが、以前こんなメールのやりとりがあった。
(ウエブ掲載にあたって、ご本人の了承を得ている)

平井「私は前々から日本の裁判というものは、性暴力にしろ、暴言にしろ、被害を受けた側に冷たいと感じていまして、そのたびに森崎さんのことを思い出します。……森崎さんは裁判をして、よかったと思っていますか?」

森崎さん
日本の被害者に落ち度があるという思想には、日本古来から続く男尊女卑の考え方が、現代においても大きく影を残しているからだと思いますね。ご質問についてですが、率直に私は裁判を起こして良かったと思っていますよ。泣き寝入りしてしまう女性が多いのが日本の社会なら、その間違った社会背景に一石投じることができたのではないか?と思うからです。また、なにより女性たちに立ち上がる勇気を持って欲しい。とくに、性犯罪被害者は社会の被害者バッシングに苦しみ、被害を受けた苦しみ以上に、そのあとの人生も多くの人から責められ続け、そのせいで自分を責め続け、自分の心の苦しみを一人で抱え込み、被害者なのに日陰の道を歩くようになってしまう。私は自分がそんな人生を歩きたくはなかったですし、そもそも被害者が堂々と生きられないなんておかしすぎます。そのことを世間に知ってほしくて起こした裁判でもありますので、まったく後悔はしていませんよ

太字は本当に私自身、常日頃から感じていることだ。
立ち上がれば、苦しい。叩かれる。それも理不尽に、卑劣に、執拗に……。
それでも、立ち上がり続ける女性がいなければ、日本社会は根底から変わっていかない。

法曹界に身を置く人びとは男女半々になるべきだし、ジェンダー教育を受けるべきだという点においても、森崎さんとは考えが一致した。発想・経験が異なれば、双方の証拠を見る目も変わるのである。

最後に過去の記事中には「現在も会社を相手に雇用撤回を争っている」とあるが、その結論も法の場ですでに出され、森崎さんの訴えは棄却されてしまった。従って、正式に当該企業を退職することとなった。しかし、それでも、森崎さんは言う。

「最後まで闘う姿勢を示すことの大切さを、障がい女性だけでなく、世の女性たちに知っていただけたのではないか? 女だからと言って諦めなくても良いんだ!性犯罪被害者も堂々と生きていいんだ!ということをわかっていただけたんではないか?と思っています。また、世の中の男性達にも”立ち上がる女性がいる!”ことを知って欲しかった。それが性犯罪の抑止につながると思いましたし、しいては差別の根切りにつながっていくと思います。それを願って起こした裁判だったんです。あとは後世を生きる女性たちが、自信と勇気を持った生き方ができる社会へと変貌を遂げてほしいと思いますね」


ウエブ掲載までの経緯説明が長くなったが、原稿のオリジナルバージョンは次ページへ


NHKハートネット 【出演者インタビュー】 2016年7月11日(月)
森崎里美さん「もっともっと障害者の方々と関わっていただけたら」

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